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炭素文明論


佐藤健太郎の「炭素文明論」を読んだ。炭素化合物と世界史との関係を幅広く紹介した本。
いや、こんな表現ではとても収まらない。

そもそも人間が生きるということは、形だけで言えば有機化合物を食べて、体内で別の有機化合物を化学変化させている。その前後で発生するエネルギーによって行動し、縦と横に広がって歴史ができているわけで、結局はすべて有機化合物なのだ!

有機化合物は Wikipedia からの引用によれば

有機化合物(ゆうきかごうぶつ、英: organic compound(s))は、炭素を含む化合物の大部分をさす。

であって、炭素と人類との関係は切っても切れないものなんだと思う。むしろ炭素の手のひらで踊っているだけなのかも。

佐藤健太郎氏は製薬メーカを経て、サイエンスライターをされている。有機化学美術館は、素人の私でもとても楽しく読める。それだけ文章もおもしろい。どこだったか、面白い文章にするために雑学を盛り込んでいる、とかいうことを仰っていた。

あとがきに

こうした本を書いたのは、ひとつには化学に対する関心の低さを、少しでも改善したいという思いがあったため

ということだそうだが、高校で化学を勉強する前にぜひ知っておきたい内容だった。

おおよそ勉強は目的があって行われるわけで、高校まででは崇高な目的の基礎固めにすぎない。でも、目的を知れば自然と興味が湧くところもあるとおもう。「XXX なんて将来使わないし役に立たないのに、なんで勉強しなきゃいけないんですかぁ?」とか、しっかり答えなければならないと思う。
XXX=化学の場合に、本書は本当に有用。なによりおもしろい。

ハーバーボッシュ法とかアンモニアの合成法として学んだ時、オシッコを合成させて何がおもろいねん、と心の中で思っていた。それが人類にとって切迫した事態を打開するイノベーションだったなんて!

歴史に関しては、「そうなのかな?」と思うところもある。けど、そうした本筋とはやや離れた疑問を差し引いても十二分に読んで化学に興味を持つ価値はある。