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聊斎志異(岩波文庫 立間祥介 編訳)

聊斎志異を読んだ。1年以上前の話だけれど。 聊斎志異は、蒲松齢が1680年・40歳頃に完成させたとされる短編小説集。今回読んだのは岩波文庫から出ている立間祥介が編訳した上下巻。

もともと芥川龍之介の王朝ものや中島敦が子供の頃から好きだった私としては、いずれの小品も楽しくてしょうがない。そしてちょっと大人な、ぶっちゃければ性的な描写が男心をくすぐる。

中国人は、日本人の「物にも神が宿る」考え方と比べると「物は物」という意識が現代でも強いと感じる。むしろ現代のほうが高度経済成長による大量消費社会のもとでは強い。有り体にいえば乱暴に扱う。 でも、 聊斎志異のなかでも、ずいぶんと乱暴な描写は多い。そもそも文化が違うんだろうな。先のヤオロズの神に表れるように。

もともと読み始めたのは、中国映画の画皮(邦題:画皮 あやかしの恋)や2011年版の倩女幽魂(邦題:Chinese Ghost Story)を見て、すっかりはまってしまったから。とくに画皮は、何度も見なおした*1

今回読んだ岩波文庫版は、下巻解説によると全500篇前後の中から92篇を上下巻として翻訳したもの。1997年刊行。もともと全訳の平凡社版をベースに、もう一つの全訳版として作られようとしたらしい。

立間祥介氏は本屋でよく見かけて、著作がとても多い印象がある。翻訳も流石で、すっと情景が心に浮かんで、聊斎志異の世界を覗きこんでいるよう。

なお、ベースにしようとした平凡社版は1999年から2000年にかけて平凡社ライブラリーとして再販されている。聊斎志異の全訳はこの平凡社版だけみたい。

*1:ただし続編の画皮2は、監督も違うしストーリもひどい。画壁は、監督が同じだし画皮とは別の愛情を表現していておもしろい。主役の2人は実世界でも夫婦になったし。