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クリティカル・チェーン

5年ぶりにエリヤフ・ゴールドラット著、三本木亮 翻訳のクリティカル・チェーンを読んだ。本書は、エリヤフ・ゴールドラット博士が考案した制約条件の理論 (TOC)をベースにしたプロジェクトマネジメントを解説する小説。

クリティカル・チェーンとは、「プロジェクト全体でもっとも工数がかかる一連のタスク(クリティカル・パス)」と「各タスクをこなす担当者や設備といったリソース」とによる、プロジェクトをこなす上での制約条件。この制約条件をまもるマネジメント法が主題。 作中にはないが、本書で解かれたプロジェクト・マネジメント手法は、クリティカルチェーン・プロジェクトマネジメント(CCPM)と呼ばれている。

プロジェクトは、クリティカル・パス上のタスクが一番時間がかかるのだから、 クリティカル・パスを止めてはいけない。逆にクリティカル・パス以外のタスクは、 クリティカル・パスへ影響しない範囲であれば遅れても問題がない。

だけど往々にしてクリティカル・パスとは無関係のタスクにも締め切りが定められ、 学生症候群やパーキンソンの法則など無意識のうちにクリティカル・パスに影響が出るほどタスクを遅らせてしまう。

そこでCCPMでは、クリティカル・パスを明らかにした上で、クリティカル・パスを止めないための手法を展開する。本書では、主人公たちが問題にぶつかりながら、いかにして従来のタスクごとに締め切りを設けるマネジメント法に問題があるかを示し、CCPMへと考えをシフトさせていくか、が描かれている。

5年ぶり2回目の読了。1回目は実感がわかなかったけれど、経験値が溜まったのか4つ疑問が湧いてきた。 たしかに本書の例示ではうまくいくのだけれど、現実問題として以下の問題がある。

  1. PERT図がそもそも正しく描けていない
  2. CCPMの対象から逸脱しているが、実際のプロジェクトでは考慮しなければならない。 そもそもPERT図すら描けないプロジェクトも多いのでは…。 プロジェクト内のタスクを把握しないまま見切り発車もある。
  3. プロジェクト中にタスクの追加・変更がある
  4. 意思疎通が図れていないなどで、後戻りが発生する
  5. この2つはCCPM (TOC) におけるマーフィー(予想外のトラブル)だけど、バッファを一瞬で飲み込む威力があると思う。また、クリティカル・チェーンが移動する可能性すらある。
  6. バッファの大きさの定め方が書かれていない
  7. 一番重要だろうに、本書でもわざと書いていないように思える。手の内は全部明かさないということか、経験が必要ということか…。(もともとTOCは「経験を最大化する理論」と著者が言っていたのを見たことがある気がする。)

最近は、こうした問題に対してどうしているのだろうか?これらの問題がどうしても残ることで、CCPMは銀の弾丸になり得ないのだろうか?

本書は、AmazonでKindle版も販売されている。紙の場合は1,680円だけどKindle版の場合は1,280円とお得。個人的には紙の方が好き。なお、エリヤフ・ゴールドラット博士は2011年に63歳という若さで他界してしまった。当時、ニュースで見たときはショックだったな。